東京競馬場・芝1800mで行われる伝統の重賞「エプソムカップ(GIII)」。例年、春の競馬シーズン後半を彩り、中距離路線の実力馬たちが覇を競います。本記事では、2014年から2023年までの過去10年間における1~3着馬のデータを基に、このレースで好走する馬に共通する傾向を多角的に分析します。脚質、枠順、年齢、人気、騎手、血統、前走ローテーション、斤量といった観点から、レースの特性と注目すべきポイントを探ります。
コース概要
エプソムカップの舞台となる東京競馬場・芝1800mは、スタートから最初のコーナーまで距離があり、バックストレッチも長いため、比較的枠順の有利不利が少なく、各馬が能力を発揮しやすいコースとされています。広いコースでのびのびとした走りが求められます。
脚質:差しが優勢も、逃げ馬の粘り込みに注意
過去10年のレース結果を見ると、中団や好位から差す競馬をした馬が最も多くの勝ち馬を出しており、差し・先行馬が中心となる傾向が見られます。府中の長い直線は、末脚を活かしたい馬にとって格好の舞台です。
一方で、逃げた馬の成績は【1-1-3-5】(勝率10%、複勝率50%)と、半数が馬券圏内に残っており、軽視はできません。2015年にはエイシンヒカリが武豊騎手を背に鮮やかな逃げ切り勝ちを収めた例もあります。ただし、展開が向かなかった場合には二桁着順に終わるケースも見られ、極端な結果になりやすい点には留意が必要です。
後方からの追い込みはやや厳しく、過去10年で道中後方に位置した馬が3着以内に入ったのは1頭のみと、展開の助けが必要となるでしょう。
枠順:内枠やや不振、外枠からの好走も目立つ
枠順別成績では、1枠が【0-1-1-15】と勝ち星がなく、2枠も勝ち馬が出ていないのに対し、8枠は【3-3-2-18】(勝率10.7%、複勝率30.8%)と好成績を収めています。内で包まれるリスクを嫌う馬や、スムーズに外からポジションを取りたい馬にとって、外寄りの枠はプラスに働く可能性があります。
2016年のルージュバック(18番枠)や2018年のサトノアーサー(16番枠)が外枠から勝利している事例もあります。ただし、東京コースは基本的に有利不利が少ないため、内枠が絶対的に不利というわけではなく、展開や馬の特性によるところも大きいでしょう。
年齢:4~5歳馬が中心、7歳以上は苦戦
3着以内に入った延べ30頭中15頭が4歳馬で、5歳馬を含めるとその大半を占めます。勢いのある若い世代、特にキャリアの浅い馬の活躍が目立ち、過去10年の勝ち馬11頭中7頭がキャリア10戦以内でこのレースを制しています。2019年優勝のレイエンダ(当時7戦目)、2022年のノースブリッジ(当時8戦目)などがその代表例です。
対照的に7歳以上の馬は苦戦傾向で、馬券圏内に入ったのは過去10年で2014年のダークシャドウ(3着)1頭のみです。6歳馬も好走例はあるものの、ダイワキャグニー(2020年1着)やソーグリッタリング(2020年2着)など、芝2000m以上の重賞で好走歴のある実力馬が中心でした。世代交代の様相を呈することも多いレースと言えます。
単勝人気と波乱度:比較的人気サイドが信頼できるが、波乱も
1番人気馬の成績は【3-2-1-5】(勝率30%、連対率50%)と、まずまずの信頼度を示しています。勝ち馬の多く(11頭中10頭)は5番人気以内から出ており、極端な大波乱は少ない傾向にあります。
しかし、2020年には不良馬場の影響もあり、9番人気のダイワキャグニーが勝利し、18番人気(最低人気)のトーラスジェミニが3着に粘り、3連単で421万馬券という大波乱が起きたことも記憶に新しいところです。
近年では、2021年(1着3番人気、2着6番人気)、2022年(1着4番人気、2着8番人気)のように、中位人気の馬が上位を占めるケースも見られ、本命サイドで堅く収まるとは限らない点には注意が必要です。
騎手:東京巧者、リーディング上位騎手が安定
過去10年で複数回このレースを制しているのは、クリストフ・ルメール騎手(2019年レイエンダ、2024年レーベンスティール※)と戸崎圭太騎手(2016年ルージュバック、2018年サトノアーサー)です。両騎手ともに東京コースを得意としており、その手腕が発揮されるレースと言えるでしょう。
※2024年のレーベンスティールは当記事の集計期間外ですが、参考情報として記載。
関東所属騎手の活躍に加え、関西の有力騎手も結果を出しています。2015年のエイシンヒカリ(武豊騎手)、2022年のノースブリッジ(岩田康誠騎手)などがその例です。
一方で、2020年の波乱時には、ソーグリッタリングの藤井勘一郎騎手やトーラスジェミニの木幡育也騎手など、人気薄の馬を上位に導いた騎手の好騎乗も光りました。
血統:サンデーサイレンス系、キングカメハメハ系が主流
父または母父にサンデーサイレンス系を持つ馬が好成績を収めており、特にディープインパクト産駒は2014年ディサイファ、2015年エイシンヒカリ、2018年サトノアーサーと3頭の勝ち馬を輩出しています。
キングカメハメハ系も有力で、2019年レイエンダ、2020年ダイワキャグニーが勝利。これら日本の主流血統が強さを見せています。
ただし、2016年優勝のルージュバック(母父Awesome Again)や2017年勝ち馬ダッシングブレイズ(父Kitten’s Joy)のように、欧米の血統を持つ馬の活躍も見られます。また、2020年の不良馬場で3着に粘ったトーラスジェミニ(父キングズベスト)のように、馬場状態によっては欧州型のスタミナ血統が浮上するケースもあります。
前走ローテーション:マイル~中距離重賞組が中心
好走馬の多くは、前走で1600m~2000mの重賞やオープン特別に出走しています。
主なローテーションとしては、
- マイル重賞組:ダービー卿CTやマイラーズCなど。2023年勝ち馬ジャスティンカフェは前走ダービー卿CT2着。
- 中距離重賞組:新潟大賞典や大阪杯など。2024年優勝のレーベンスティールは前走新潟大賞典からの巻き返しでした。
- 東京OP特別組:メイステークスなど、同コースの経験馬。
重要なのは、前走である程度の人気(単勝6番人気以内など)に支持されていた馬が順当に好走するケースが多いという点です。前走で大きく崩れていない馬が、ここでも力を発揮する傾向にあります。
馬体重・斤量:極端な斤量増は割引、軽量馬にも注意
別定戦で行われるため、実績に応じて斤量が加増されます。過去10年で58kg以上の斤量を背負って勝利した馬はおらず、トップハンデの馬はやや苦戦する傾向が見られます。
比較的軽い斤量の馬や、牝馬(牡馬より2kg減)の好走も散見され、2016年のルージュバック(55kgで勝利)がその一例です。斤量差が結果に影響を与える可能性も考慮に入れるべきでしょう。
まとめ
エプソムカップの過去10年の傾向を分析すると、「東京コースに適性のある4~5歳馬」、「サンデーサイレンス系・キングカメハメハ系の血統馬」、「前走で人気サイドだったマイル~中距離重賞組」といったキーワードが浮かび上がってきます。枠順では外枠の健闘が目立ち、脚質は差しが中心ながら逃げ馬の粘り込みにも警戒が必要です。
これらのデータはあくまで過去の傾向であり、絶対的なものではありませんが、レースを予想する上での一つの参考情報として活用できるでしょう。今年のレースも、これらの傾向を踏まえつつ、各馬の個性や当日の馬場状態などを総合的に判断することが重要です。
参考資料:JRA公式サイト過去レース結果、各種競馬情報サイト。本記事はデータ分析に基づくものであり、馬券購入を推奨するものではありません。馬券の購入は自己責任でお願いいたします。

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